いつか、死んだ人間の体温を思い出せなくなる日が来るのだとしたら



28歳という背番号を掲げながら生きた一年が、まもなく終わろうとしている。今週末にわたしは、29歳となる。

 

大変なことでも何があったとしても、生きている限りはどんどんと年齢だけは止まらずに更新していくけれど、わたし自身という人間の中身だけはずっと置いてけぼりのようだ。

 

11月が始まる頃、わたしは毎年のように思い出すことがある。

正確には思い出さないようにしているが、正直どうしていようが、頭の中にぼんやりとよぎるのだ。彼女の命日を明確に覚えないようにしたくても、ふとカレンダーを見ては「あ、今日ってそういえば、そうだった」と思い出してしまう。

 

大切な後輩が、自ら命を絶った日。

あの日も冬の始まりのような温度で、少しずつ寒くなり始めた頃だった。

 

彼女のことについては、過去にも何度かこのブログで触れている。

 

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何年経っても、彼女の声を忘れることはできない。

ときどき、彼女の写真を集めたDropboxのフォルダを眺めては、懐かしい気持ちになる。こんな笑い方をする子だったな、と記憶を繰り寄せる。

遺品として分けてもらった、彼女の大事にしていたらしいネックレスを眺めては、またケースに戻す。まだこのネックレスからは、彼女の息遣いがする、と確かめる。

 

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死んだ人間のことを、いつか誰もが思い出さなくなった時、その人間は二度目の死を迎えるという。それは日々のことに追われている生きている人間からすれば当然の流れであるかもしれない、しかし考えるだけでも、とても寂しいものだ。

 

若くして死んだ後輩のことを、私は忘れないように努めずとも、毎年のように思い出す。それはまだ、彼女が若かったから、そしてわたしが若くて人の死に不慣れだったからかもしれない。

 

だとすれば、わたしが40歳、50歳と年齢を重ねていくであろう未来では、彼女のことを忘れかけてしまうのだろうか。声を、思い出せなくなるのだろうか。

そう思うと、どうか彼女のことを忘れないでと、声を大にして誰かに伝えたくなる。彼女のことを、生前に知らなかった人にさえ。

 

上手に大人として振舞っている人間たちは、身近な人の死を忘れたわけではない。毎日の生活の中で、それを覚えていることを誇示しないだけなのだ。きちんと大人たちは自分たちの心の中で折り合いをつけて、前を向いて生きているのだ。

わたしが、それができない、だけなのだ。

 

今年、わたしは大切な近い身内の中でも人を亡くした。

それはあまりにも悲しく、到底受け止められるようなものではなかった。涙が枯れ果てるとはこういうことか、と思った。それ以上はもう何も語れない。

それでも今日や明日、生きているわたしはやっぱり踏ん張って生きていかねばならないし、年賀状の季節が来る今、喪中はがきの用意もしなければならない。いつまでも、立ち止まってなんかいられない。

 

誰が死のうと、誰がいなくなろうと、世界はまわる、まわり続ける。

そんな当然すぎる事実に、いざ直面すると、なんだか打ちのめされそうになる。

 

あの人のことを、忘れないでいて。忘れてしまったらあの人は二度死んでしまうのだから!ねえ!

そう大声で叫びたい気持ちで、いつも胸が溢れている。でも、そんなものは残された私による勝手なエゴだということを分かってはいる。亡くなった人間には、きっと忘れられる権利だってあるだろう。


それでも、わたしの愛した人を、どうかあなたも忘れないで、誰も忘れないでいてと思っている。

わかってる、こりゃエゴだよ、エゴ。

でもわたしがこうやって連呼してることが、わたしにとっては、一番の葬いなのだと思う。そうすることで、わたしが救われているのだと思う。

 

いつの日か、亡くなった人の体温を、わたしがこんなに思い出せない日が来たとしたら。そんな日が来るのだろうか、想像もつかない。

でもそんな日が来るのだとしたら、それはわたしが前を向けた記念日ではなく、死をやっと受け止められた日なのだと思う。

 

わたしはまだ、死んだ人間に対しては未練たらったらの構ってちゃんだ。忘れられるわけなんかないし、忘れるつもりもない。

ただ、こうやって亡くなった人間のことを思い出し続ける限り、わたしは彼ら彼女らに今日も支えられているのだと実感する。ありがとう、もう少し時間をちょうだいね。

 

そしてわたしは明日からもまた、へばりついてでも生きていく。見ていてね。

 

 

愛をひっかけるための釘 (集英社文庫)

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